プロの住宅レシピ 居場所を選べる住まい ── 多様な性格が重なり合う空間

トートアーキテクツ LAB
安田 智紀

構造材を現しにした屋根下に、光と風が両側から入り込む塔屋まわりの居場所。室内にいながら外部と連続するような感覚があり、日常の中に自然と抜けのある時間をつくり出している。

壁面にはボルダリング用のホールドを設け、遊びながら上下階を行き来できる構成に。立体ワンルームの中に、子どもが身体を動かしながら居場所を選べる仕掛けが組み込まれている。

屋根形状に沿って現しとなった木の構造と、梯子のように掛けられた階段。高さ方向へと連続する構成が、居場所を点在させながらも、空間全体を一つのまとまりとして感じさせる。

ピアノ教室を開く家庭環境に配慮し、音楽の場も生活の延長として計画。特定の用途に閉じず日常の気配が重なり合うことで、音もまた暮らしの一部として自然に溶け込んでいる。

床材

水回りは光を取り込みながら、落ち着いた素材でまとめた構成。外観では内部の立体構成がそのままにじみ出るように表れ、住まいのあり方が街並みに静かに伝わっていく。

いくつもの居場所がゆるやかに連なっているこの住まいは、明るい場所、棚に囲まれた場所、少し暗く落ち着いた場所、キッチンに近い場所、両側から光と風が入る塔屋 ── それぞれに名前や役割はあえて与えず、すべて性格の異なる居場所として点在させています。

10㎡程度のコンパクトな空間が連続することで、体感的な広がりを生み出しています。
例えば「本を読む」という同じ行為でも、明るい場所を選んだり、棚の間に身を置いたり、階段に腰掛けて過ごしたり。そのときの気分や時間帯に合わせて、過ごし方の幅が自然と広がっていきます。

空間一つ一つには子どもたちのための仕掛けも随所に盛り込まれています。階段周辺にはボルダリングで登れる箇所を設け、来客の子どもたちも楽しめるアスレチックのような構成に。階段途中には椅子を造作し、食事を終えた子どもが家族の気配を感じながら過ごせる居場所としています。

素材選びでは「本物であること」を大切にしています。天井は構造材をそのまま現し、色彩は木・グレー・白を基調に、細い黒の線で全体を引き締めています。白と木だけでは和風に寄りすぎてしまうため、フレキシブルボードのグレーを入れて空間にニュアンスを加えています。

造作キッチンには子どもがお菓子作りを楽しめる小さなキッチンを併設。丸い船舶窓を用いた飾り棚には、ぬいぐるみや思い出の品が収められ、成長とともに使われ方が変わる余白を残しています。

それぞれの居場所が日々の気分や成長に合わせて選び取られ、少しずつ役割を変えていく。 家は完成した瞬間ではなく暮らしの中で育ち続けるもの。そんな時間の流れを受け止める器としてこの住まいはかたちづくられています。

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採用されている製品

東亜コルク|コルクタイル
東亜コルク株式会社
トートアーキテクツ LAB
安田 智紀
ここが私の評価ポイント!
浴室の床には、東亜コルクの「トッパーコルク」を採用。
一般的にタイルが選ばれることの多い浴室においては、コルク素材を用いるのは今回が初めての試みとなりました。
冷たさを感じやすいタイルに対し、コルクは素足でもひんやりしにくく、入浴前後の身体にやさしい感触をもたらします。素材自体が柔らかく、転倒時の衝撃を和らげる特性から、介護施設や保育施設などでも使用実績があり、安全性の面でも信頼できる素材です。
一方で、コルクは吸水性を持つため、水が乾きにくいという側面もあります。濡れると色が濃く変化するため、乾燥状態が視覚的に把握しやすく、日常の中での扱いに迷いが生じにくい点も特徴のひとつです。採用から約1年が経過した時点では、目立った劣化や経年変化は見られず、素材としての安定性も確認できています。
将来的に犬を飼うことを想定した際、滑りやすいフローリングに比べ、足腰への負担が少ない点も評価しています。施工面では接着剤が付きやすく一発勝負になりやすいことから、大工さんにとっては意外と難易度の高い床材だったそうです。そうした施工性も含めて、暮らしの中で素材の可能性を検証する、実験的な選択となっています。
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安田 智紀

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