プロの住宅レシピ 風景を織り込む「くの字」の住まい

I.M.A DESIGN OFFICE
今村 領太

大きな窓やL字に折り曲がった小さな窓から、自然のさまざまな表情を住まいに取り入れた。

くの字のラインに沿って張ったフローリングで、空間の伸びやかさを強調。天井は勾配屋根の形をそのまま生かし、白い三角屋根をふわりと乗せたようなデザインに。

家具やドアにはチェリー材を、床には杉材を採用。

小上がり奥にはスタディーコーナーを。リビングから景色がつながる窓とデスクから眺める窓と、異なる角度の景色が楽しめる。

天井材

照明でさらに木の温かさに包まれたような空間に。

お施主様が幼い頃から慣れ親しんできた敷地。ご希望の収納スペースの確保とスムーズな動線計画を満たしながら、この場所ならではの景色をどのように住まいに取り入れるかを軸に考えた結果、「くの字」のような形状の住まいとなりました。

周囲には田んぼが広がり、遠景には山々が望める穏やかな環境。さまざまな角度から景色を楽しめるよう、開口の向きを一か所に限定せず、複数方向へ開く計画としました。建物の角度が変わることで、同じ庭の景色でも、大きな窓と小さな窓から見える景色では、緑の濃さや日差しの入り方が異なり、まったく違う表情を見せてくれます。
また、リビングに設けた掘り込みスペースに腰掛け、左奥の窓を眺めると、日差しの角度によって木々の色や形が変化して見え、自然の豊かさを感じられます。

性能面では、地域や敷地条件に合わせてエネルギー消費量を計算し、最適な断熱仕様を提案しています。断熱材を増やせば性能値は上がりますが、コストも膨らみます。必要以上に数値を追い求めるのではなく、その土地の気候に合った性能とコストのバランスをとることを大切にしています。気密性能についても現場で気密測定を行い、過剰になりすぎないようc値を0.7~0.4c㎡/㎡未満を基準に施工。快適性を確保しながら無駄なコストを抑えることは、お施主様にとって大きなメリットとなります。
また、冷暖房負荷の計算や空調計画を同時に行う事で「せっかく高断熱高気密仕様としたのに、空調は無計画のため各部屋にエアコンをつけて結局光熱費が高くなる」となることを防ぎ、出来るだけ光熱費を抑えた燃費のよい住まいを目指します。
なお、この住宅では床下エアコンを採用し、1台のエアコンで電気代を抑えながら家全体を効率よく暖めています。テレビボード内にエアコンを組み込み、基礎へ向けて温風を送り込むことで、基礎全体を暖房室のように温めます。床に設けたガラリから家中に暖かな空気がめぐり、LDKだけでなく離れたトイレや洗面も優しく温めてくれます。

長く心地よく暮らせる住まい作りは、お施主様が「何を大切にされているのか」を丁寧なコミュニケーションを通して知り、すり合わせていくことが不可欠です。こうして生まれた「くの字」の住まいは、機能とデザイン性を兼ね備えたものとなりました。

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採用されている製品

羽目板|nojimoku
株式会社nojimoku
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今村 領太
ここが私の評価ポイント!
今回の住まいでは、天井には「桧の小幅板風羽目板」、フローリングに「杉の無垢材」を採用しました。どちらもnojimokuさんの製品で、天井材として選んだ小幅板風羽目板は、幅が狭く、線が細かく多くなることで空間に繊細さが生まれるので気に入っています。またフローリングは節が少なくて目も美しく、チェリー材で現場製作して頂いた家具とも雰囲気がすごくマッしています。天井はフローリングと幅を変えることで、空間に柔らかさと繊細さが加わり、締まりすぎず、わざとらしくならない点が魅力です。これらの材料はよく採用する製品のひとつです。
採用製品
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今村 領太

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